向日市不当要求行為等対策条例(案)と私の意見
(10/16市長に提出)


 向日市では昨年、市の支援・組織的対応の欠如により、生活保護ケースワーカーが自らが担当する保護受給者が傷害致死に至らせた女性の遺体遺棄の共犯に追い詰められた事件が発生しましたが、それ以降このケースワーカーの支援、この事件が起きた原因究明と、二度とこのような事件を起こさないため、向日市行政への意見・提案を、市民のみなさんと協力しておこなっています。
 向日市は、今年6月に「不当要求行為等対応マニュアル」を作成したことに続き、条例制定の準備をしており、9月17日に、議会に対して検討のたたき台として「条例案」を提示し、各議員に意見を求めました。
 私も、この間検討してきた結果、以下のように意見と提案をおこないました。市民の皆様からのご意見も頂きたくお願いします。

■向日市が提示した「向日市不当要求行為等対策条例(案)」(PDFファイル)

■私が提出した「意見書」(10月16日提出) (PDFファイルはこちら ⇒ )

向日市長
安田守様

2020年10月16日
向日市議会議員
杉谷伸夫

「向日市不当要求行為等対策条例(案)」に対する意見書

「向日市不当要求行為等対策条例(案)」に対する意見を下記の通り提出する。


1.条例制定について

 「生活保護業務上の職員逮捕事案に係る検証委員会」報告書に基づき、こうした事件の再発防止にむけて不当要求行為等対応マニュアルを制定したことに続き、条例制定を行うことについて賛成する。

2.条例の性格と考え方について

 今回の事件から向日市行政に求められることは、法令を遵守し、市民の要望に公正・適切に対応するとともに、不当な要求には毅然と対処することで、市民に信頼される行政運営を行うことであり、そのための組織体制を確立することである。条例化はその保障である。
 本条例案は、不当要求対策に焦点を絞った対策条例となっている。今回の事件の再発防止の視点からその重要性は理解するが、不当要求対策はあくまで職員の公正・適切な職務の執行を確保するための体制づくりの中に位置づけられるべきものであると考える。本市においては、「向日市職員倫理規程」にその規準等が定められているが、不当要求対策だけを「条例」として定めることは、本市の例規体系としてのバランスを欠くことになるのではないか。
 よってこの機会に、以下の考え方で条例化を行うことが望ましいと考える。

(1)法令を遵守し、市民の要望に公正・適切に対応するとともに、不当な要求には毅然と対処することで、市民に信頼される行政運営を行うための「向日市職員の公正な職務の執行の確保に関する条例」を制定する。この条例は、「神戸市政の透明化の推進及び公正な職務の執行の確保に関する条例」を参考にすることが望ましいと考える。

(2)その条例の中に、今回の事件の経験を活かした不当要求対策の章を設ける。その上で、今回提案された条例案に示されたような事項を「不当要求行為等対策要綱」として定める。

3.本条例案の具体的な内容に対する意見

 以上が、本市が新たに条例化するにあたって望ましい形であると考えるが、その上で現在提案されている「向日市不当要求行為等対策条例(案)」の条文に対しては、いくつか問題があると考えるので、少なくとも必要と考える対応について以下の通り意見を述べる。

(1)第2条(定義)について、各項目で「正当な手続きを経ることなく・・・する行為」とあるが、「正当な手続き」が何を意味するか不明である。「正当な理由なく」等とすべきである。

(2)条例には少なくとも以下の内容が含まれるべきである。
①要望等の記録の定めを設けること
・記録義務がないと、要望等に対する判断が適正か否かの根拠が判らなくなる。
②審査会の設置
・要望等や職員の対応の違法・不当性を判断する第三者機関、専門家による審査機関を設けることで、客観性を担保する必要がある。
③公表
・行政の適正な執行について、説明責任を果たすために要望等の件数、概要、実施機関が講じた措置その他運用状況を毎年まとめて公表することで、透明性を確保することが必要である。

(3)第2条(6)「市の事務及び事業の適正な執行並びに庁舎等の施設の保全及び秩序の維持に支障を生じさせる、又はそのおそれのある行為」は、「不当要求行為等」の範疇を超えて、様々な行為全般の規制に拡大適用される恐れがあるので、削除すべきである。

4.条例制定にむけた取り組みについて

(1)条例案の策定は、条例の性格・構成についての議論が必要であり、議会との十分な意見交換を踏まえて、慎重に行うこと。
(2)条例の制定に当たっては、市民に説明する場をもつとともに広く市民の意見を求めること。市民の権利を制限し、義務を課す内容を含む場合には、必ず要綱に定められたパブリックコメントの手続きを行うこと。
(3)議員の行動に関わる事項については、議会自らが議論を踏まえて自律的に定めることが望ましいと考える。本条例案とは切り離して議論すべきである。