2020年第3回(9月)定例会で行った討論


■「2019年度一般会計歳入歳出決算の認定」 に対する反対討論
■「JR向日町駅周辺開発に関する請願」に対する討論


「2019年度一般会計歳入歳出決算の認定」 に対する反対討論

 杉谷伸夫です。
 議案第71号・2019年度一般会計歳入歳出決算の認定について、反対の立場から討論をおこないます。


1.昨年度の注目すべき事業について

●市役所の新庁舎の着工
 市役所の新庁舎建設工事が2019年度に着工し、今年中に完成、来年早々からオープンの予定です。ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビルディング)の仕様で設計・建築された新庁舎は、地球温暖化対策を進める向日市のシンボルとして積極的に活用し、環境政策の推進を図って頂きたい。

●子育て支援事業としては、2019年度には、新たに認可保育所が1ケ所、小規模保育が2ケ所運営をスタートし、2020年度からは更にもう1ケ所の認可保育所がスタートしました。これにより、向日市の保育所定員は、2017年4月の1209人から、2019年4月には1394人と、この2年間で185人の定員増となりました。
 一方で、子育て世帯の増加により保育所入所希望は、この2年間で180人増加しており、多くの子ども達が保育所に入れない状態は続いています。

●第4向陽小学校、第2・第4学童保育所の増築が、一部今年度にわたって実施され、北部の児童数の増加に対応することができました。

●コミュニティバスについては、数年間の市民参加の検討を経て、昨年10月にいよいよ運行スタートしました。運転手不足、利用者のバス離れなど、公共バス交通をめぐる多難な状況の中での船出となり、かつ新型コロナ感染症の問題で利用促進がなかなか思うにまかせない状態ですが、これからが正念場です。

●議会においては、市長報告が実施されるようになりました。毎議会の冒頭に、向日市の主要な事業の進捗について、市長が議会への報告を行うことから議会を始めることとなり、大きな一歩になったと思います。市政の情報をできるだけ議会と共有していけるよう、今後更に積極的な市長報告を求めたいと思います。


2.課題を残した事業として指摘したいこと

●子育て支援についてです。
 「子育て支援は本市の最優先課題」と市長は私の質問に答弁されましたが、果たしてその言葉通りだったのか、私には疑問があります。

①待機児童問題の解決は、まだまだだ
 2015年以降、北部新市街地の人口増加、とりわけ子育て世代の増加に伴い、急激に保育需要が増大しました。本市では、民間保育所の新設への支援をはじめ、保育施設の受け入れ能力の拡大に努めてきた結果、年度当初の国基準の待機児童数は今年度当初には10人に減少しました。
 しかし、この数字はあくまで国が定めた基準による「待機児童」であり、現実の待機児童は、はるかに多いのです。今年度当初の入所選考においては、一次選考での落選者は、145人であり、うち二次選考に通った人はわずか26人です。その他に保護者が育休を取得したために、上の子が保育所を休所せざるを得なかった人が18人など、保育所入所を希望しながら入所できないでいる実質的な待機児童は、相当な数にのぼります。
 本市に住まわれた子育て世帯に対して、保育所を希望するすべての人に良好な保育を提供できるよう、最大限の努力を求めたい。
 そのための課題について意見を申し上げます。
 1つは、本市の子育て支援事業計画における保育の量の確保計画が、過去一貫して現実より甘いのではないかということです。事業計画は今後5年間の見通しを立てますが、昨年度までの計画では、計画より現実の保育需要が大幅に上回り、何度か上方修正が行われました。今後の見通しについても、厳しい見方でチェックして頂きたい。
 2つ目は、本市においても一貫して「保育士不足」が大きな課題になっており、保育士確保によって待機児童が相当数解消できるはずであり、具体的な施策を実施すべきです。既存の保育所の多くにおいて、保育士が減っており、保育士不足によって子どもの受け入れに制約が出ています。保育士の処遇改善は社会的要請でもあり、行政が保育士へ直接支援施策を行うことは重要な意義があります。私は保育士確保の課題を、ここ数年ずっと指摘し続け、具体的な対策を求め続けてきましたが、未だに目立った対策が行われていません。そんな中で、お隣の長岡京市がさっさと民間保育士への家賃補助事業の実施を発表しました。すでに京都市は保育士への様々な直接支援策をおこなっています。周りを囲まれた向日市の施策は、もう待ったなしです。

②子育て支援医療費助成では、中学生の通院窓口負担の小学生並みへの引き下げが1年遅れました。

 京都府が昨年秋から、子育て支援医療費助成制度を拡充したことを受け、本市では、昨秋から中学生の通院医療費助成の一部拡充をおこないましたが、小学生並みの「ほぼ無償化」は1年遅れでこの9月から実施されました。京都府の制度拡充の財源を使えば実施できるはずだ、と訴えたにもかかわらず先延ばしされたことは、大変残念です。
 子ども達に無償で医療を提供することは、何にも増して社会の優先課題でなければなりません。しかし残念なことに日本政府は、こうした立場をとっておらず、子どもの医療に対しても「家族の責任」=自己責任を求めています。国の制度では、子どもの医療費負担は大人とほぼ同じです。
 「子どもの医療費の完全無償化」は、本来は政府の責任において全国一律に実施すべきであることを、この機会に改めて主張したいと思います。

●コミュニティバスの運行改善と、既存バス路線の維持

 折しも、運転手不足など公共交通バスを巡る深刻な環境の悪化の中で、バスの運行計画も思い通りにゆかず、今年に入ってからは、新型コロナ感染症の波に襲われ、前途多難なスタートでした。しかし走らせたからには、必ず成功させるという覚悟を持って、チャレンジして頂きたいと思います。
 また阪急バス77,78号系統は、市南部住民にとって重要な生活の足であり、なんとしても存続するよう求めます。

●JR向日町駅東口開設事業
 JR向日町駅東口開設事業については、2017年に官民連携事業による事業構想が示されて以降、いっこうに具体的な姿が示されていませんでしたが、今年3月議会で、いきなり36階建て100m級のタワーマンションの案が示されました。マンションを含む高層ビルと聞いてはいたものの、市民にとってはいきなりのタワーマンション計画は、大きな懸念を生んでいます。コロナ感染症で社会が右往左往している中で、都市計画変更の手続きがどんどん進められてきましたが、誠実かつ丁寧な説明で市民の理解を得るためには、一旦立ち止まる必要があると考えます。

●国民健康保険について
 国民健康保険の運用を巡っては、この間滞納や短期証の発行件数を減少させている点など、運用面の努力は評価したいと思います。
 しかし、向日市の国民健康保険料は、2017年度から毎年大幅な値上げが行われており、京都府内でも最高水準の保険料になりました。その結果、市の資料によると、夫婦2人、所得200万円(基準所得167万円)の世帯の保険料は、2019年度で347,700円に、2020年度は360,100円になっています。所得200万円の厳しい世帯が、国保料だけで所得の18%、36万円も払わなければならないという過重な負担です。
 私は市民の生活を第一に、一定以上の負担となる市民への軽減等、柔軟な運用が必要であると訴え続けてきました。国保財政の運営は、市町村の権限です。市町村の判断で困難な市民への支援を行うことを全面否定する姿勢は、国保の運営のみに留まらず、市民生活を第一とすべき自治体運営の基本に関わる問題であり、この考え方を改めるよう求め続けます。

●高齢者支援
 新型コロナの影響で、高齢者の施設が利用できなくなるなど、高齢者は閉じこもりがちになっており、一人暮らしの高齢者などへの行政の支援はいつにもまして重要になっていますが、いくつかの高齢者事業において利用者が目立って減少しているものがあり、気になっています。
 一例を挙げると一人暮らし高齢者への配食サービスです。昨年度より事業者が変わったことや、民間の配食サービスが増えてきたことなど、様々な要因があるようですが、行政が行う配食サービスは、単に食事を提供するだけでなく、要配慮高齢者の見守りという重要な役割があります。安易に民間の配食に置き換えられるものではないので、こうした高齢者サービスについては、ぜひ利用減少の原因究明とその対策に取り組んで頂きたいと願います。


3.今後強化していただきたい事業

●新型コロナ対策
 今年3月初めからの突然の学校の臨時休校で、子ども達、保護者、すべての学校関係者を大きな混乱になりました。臨時の長期休校中の学校の果たすべき役割について、多くの保護者・市民から寄せられたご意見をもとに、しっかりと検証を行って、今後の不測の事態に備えて頂きたいと思います。
 秋から冬にかけて、インフルエンザの流行期を迎えるまでに、誰でも、いつでも、何度でも、必要な検査を受けることができるようPCR検査体制を抜本的に拡充しなければなりません。多くの市民の求めに答え、向日市も国や京都府に強く要求して頂きたいと思います。

●公立保育所のサービス改善へ本腰を
 公立保育所の保育サービスの改善に取り組んでいただきたい。民間保育所は、新しい保育所が多いこともあり、暖かいご飯の提供、ふとんのクリーニング、紙おむつの処分など、保護者の需要に応じたサービスに対応していますが、公立保育所では対応していません。また保育所から保護者への連絡をメールやLINEで配信するなど、民間園や小中学校では行われていることも、公立園では実施されていません。公立園でも民間園でも、向日市の保育所では同じ水準のサービスを受けることができるよう、民間園の良いところはどんどん取り入れて、対応して頂くよう求めます。

●生活保護ケースワーカー事件の教訓を活かし、生活保護行政の改革を
 昨年6月に起きた、本市生活保護CWが関与した事件は、市民に大きな衝撃を与えました。職員は裁判で有罪判決、向日市からは懲戒免職という最大限の処罰を受けました。そしてこの間問われてきたのは、職員をそこまで追い込んでしまった向日市行政組織の問題であり、市民も多くの本市職員も注視していることと思います。
 事件以降、本市は事件の検証委員会を設置し、CWの増員、経験豊富なSVの配置、警察OBの配置など生活保護の実施体制の強化の他、不当要求対応マニュアルの作成と条例化の検討、部長が福祉事務所長を兼務している状態の解消や、福祉職の職員募集など、検証委員会報告書の指摘に基づく対応がなされつつあります。今後、節目節目にその取り組みを議会へ報告して頂きたいと思います。特にコロナ対策の責任者が福祉事務所腸を兼務している状態はすみやかに解消すべきです。
 また、事件をきっかけに結成された「向日市の生活保護を考える会」などの知識や経験のある市民グループの提言なども取り入れ、市民によりそう生活保護の着実な実施で、市民の信頼を回復して頂きたい。
 また職員は、本市の自己申告制度に基づいてSOSを発していたのに、救うことができませんでした。この問題は、極めて重要な課題だと考えます。必ず検討をおこない、二度と犠牲者を生み出さないように改革に取り組んで頂きたいと思います。

●地球温暖化対策への取り組み
 地球温暖化対策は、社会を構成するすべての部門において、主要政策として取り組まれなければなたない共通の課題です。本市においては、ふるさと向日市創生計画の1施策に盛り込まれたものの、意識的な取り組みになってるとは言えません。
 来年度、向日市の環境基本計画が最終年度を迎えます。新たな環境基本計画の策定には、ぜひ専門的な知見や経験を持つ市民の参画を得て、意欲的な取り組みを行って頂くことを要望します。

●原画展への後援拒否問題
 昨年夏に、向日市内で「戦争なんか大きらい」という、日本を代表する絵本作家による平和を願って描いた絵の原画展が向日市内で開催されましたが、向日市はこの催しの後援=名義貸しを拒否しました。その理由は「原画展会場で販売する本の末尾に『改憲反対の声をあげ・・・』との文言があるから」とのことでした。
 平和を願って積極的に活動する市民が、「平和憲法をまもろう」「憲法9条改悪反対」を訴えるのは当たりまえのことです。そもそも憲法第99条で、公務員は憲法を擁護する義務を負っているのであり、憲法を守る市民の催しを擁護する義務があるはずです。
 こうした状況は各地で起きています。「政治的圧力」に屈服して後援しない、ひどい場合は会場も貸さない事例や、右翼団体の妨害が怖いからと言って、日本軍慰安婦問題の催しに協力しないなど、右翼的圧力、暴力的圧力に行政が易々と屈してしまう事例が各地で見られます。平和、人権、表現の自由を守るために、行政にも意識的な努力を求めたいと思います。

 以上、2019年度一般会計の事業に関し、評価できる事業、評価できない事業について意見を述べましたが、賛否は一括であることから、私が従来強く訴えてきた待機児童の解消にむけた積極的な保育士確保策、経済的に困難な国民健康保険加入世帯への市独自の支援策が全くなされていないこと、JR向日町駅周辺開発事業について市民の合意作りの配慮に欠けた事業計画の進め方、生活保護CW事件に関わる組織的な責任があいまいであることなど、重要な事項について賛成できないことから、本決算の認定には反対させていただきます。



「JR向日町駅周辺開発に関する請願」に対する討論
2020/09/17


 杉谷伸夫です。
 JR向日町駅周辺開発に関する請願に対し、私の意見を述べさせていただきます。

<経過>
 11年前に、JR向日町駅の橋上化計画が議会で否決されました。その際に指摘された当時の計画の抱えていた課題を解決し、東口開設の効果を高めようとする事業構想が3年半前にあたらに示され、この数年にわたって検討が進められてきました。
 その中で最も事業規模が大きい駅ビル事業は、JRをはじめとする地権者の協力を得て、向日市の事業費負担を軽減する手法として提案されたものです。その具体的な内容については長らく示されていませんでしたが、ようやく今年2月の向日市議会まちづくり特別委員会で、最大36階建ての高層マンションと中低層の商業系ビルの複合ビルを想定しているとの説明がされました。
 その時点では、JR他関係者との最終合意には至っていないとのことでしたが、その後合意が成立し、5月19日の都市計画審議会に、都市計画変更の原案が示され、6月以降住民説明会、公聴会等住民の意見聴取手続きが行われ、今月中にも都市計画決定されようとしています。

<私の見解>
 JR向日町駅の東口開設と駅周辺整備による、この地域のにぎわいづくりは、多くの市民が求めるものです。一方、その賑わいづくりと事業財源づくりのために検討されてきた駅ビル構想は、商業系ビルの内容は全く不明なまま、結局高さ100m超のタワーマンションの計画だけが示されたことに、多くの市民から懸念の声が出されました。
 私はこの間、街頭やインターネットを使ってのアンケートで、200人近い市民の方々から無差別に意見を聞いてきましたが、東口開設のためにタワーマンションを建設する計画に対する賛否については、本当に意見は真っ二つに分かれました。
 賛成意見の多くは、東口開設が向日町駅周辺の賑わいづくりにつながることを期待する声です。一方で、私が思っていたより多くの方々から、タワーマンションに対する懸念の声をお聞きしました。
 この間、事業を前に進めるためには「これしかない」との言葉を、この事業計画に携わってこられた方々から何度も聞きました。11年前の計画の挫折以降、改めてこの間努力していただいた関係職員のみなさんにとっては、ようやくここまで来ることができたとの思いでしょう。しかし市民にとっては、いきなり100mのタワーマンションであり、驚かれるは当然です。またタワーマンション特有の問題も指摘され、懸念の声が出されています。それに対して、この間の議会審議と市民意見聴取の経過を見ても、市民の懸念の声に正面から応えたとは言えません。特に、36階建てのタワーマンションとなれば、京都で最大高さのビルとなります。景観など本市のまちづくりの中で、建築物の高さ規制についての議論もほとんどないまま、個別の建設計画が進んでゆきます。「事業を進めるためにはこれしかない」と財政面だけで容認していくならば、大きく方向を誤る可能性があるのではないでしょうか。
 地権者などとの合意作りに数年を要した一方で、市民の合意づくりの時間が数ヶ月と短かすぎるのです。もちろん定められた手続きは取られているのでしょうが、まちづくりは市民の求める方向に進めるべきです。100m超のタワーマンション計画については、出された懸念に丁寧に答えて対応して頂く必要があります。
 また建築物の高さに関する規制の考え方についても、今後これを契機に向日市の景観政策の中に位置づけて議論していくべきだと考えます。
 この都市計画決定は、新型コロナ感染症の問題で地域社会全体がその対応に追われる中で、手続が進められてきましたが、私はこのまま大急ぎで都市計画決定すべきでなく、一旦立ち止まって慎重に検討すべきだと考えます。

 しかし一方で、請願者が求めておられるように、15階建て以下への高さ規制を設けた都市計画に変更することは、この間検討を進めてきた計画を白紙に戻すに等しいと考えることから、私は賛成することはできません。

 最後に、もう1つ無視してはならない問題があります。タワーマンション建設予定地のすぐ隣にお住まいの十数軒の市民の方々への配慮です。この方々は、向日市の突然の都市計画の変更が行われれば、100m超の高層マンションがすぐ裏に建つという、予測できなかった事態に直面されます。去る9月14日には、当事者世帯の半数以上の方々から向日市との懇談の場を設けるよう求める要望書が出されています。これら世帯の方々が直面する問題に対しては、早急に誠実丁寧に市の責任において対応すべきであると、本計画の是非とは別に強く求めたいと思います。

 以上、本計画決定の手続きについては、市民理解を得ることを優先して慎重に行うよう再考を求めるものですが、本請願に対しても賛成できないことから、採決に当たっては、退席させていただきたいと存じます。