ニデック開発土地課税違法確認訴訟・本人陳述(全文)
(2024年2月1日・京都地裁)


 2月1日、京都地裁で最初で最後の口頭弁論があり、私たちの主張を代理人弁護士が述べた後、原告2人が陳述を行い結審しました。判決は5月16日・13:10の予定です。

原告(水島雅弘)意見陳述 全文

 本日は、口頭弁論にあたり、意見陳述の機会を得ましたことを感謝いたします。

 さて、本件訴訟は、令和4年6月、向日市を相手として、固定資産税の不適切課税があり多大な損害が発生していると監査請求を求めたことに起因しています。
 本件土地は、令和2年3月、農地転用により田、畑約6万6千平方米を社屋建設を目的として取得し、同年5月使用収益開始を通知、同年12月、約3万平方米の土地に社屋建築着工、令和4年6月、C棟として完成したものであります。

 監査請求は受理され、結果は「請求人の主張については理由がない」として棄却となりました。

 私水島と杉谷伸夫は、この決定を不服として、同年9月21日、すでに「使用収益」が開始されている、森本東部地区区画整理事業施行区画8街区、約3万平方米に「みなす課税」を実行しないのは「職権濫用」であると提訴したものであります。

 提訴の訴因等詳細は代理人より述べます。

 提訴後、ウェブ上でどうして本件が発覚したのか種々話題になりました。この疑問に応えながら、向日市の税務行政上の不適切な2件の課税について述べます。
 平成28年4月、固定資産台帳縦覧の際、私、水島より「東向日駅」の土地の課税が「鉄軌道」のみの「地目」では不適切ではないかと指摘したところ、更正されることとなり、約4か月の調査の後約1万平方米の土地が「宅地」「雑種地」として課税徴収されました。この増収額は500万円程度です。

バスの営業所、その駐車場、蕎麦屋、喫茶店が立地しています。バス事業は市制施行前からありますので、この課税は50年は続いていたものと判断できます。更正する機会は何度もあったと思われます。忖度があったとしか思えません。しかし、更正が迅速に実行されたことは記憶にとどめる必要があります。

 令和2年、この課税結果を検証する文書があることを他市の税務課職員から知らされました。それが「向日市固定資産評価の概要調書」であり、この資料を情報公開により取得、平成29年の調書で「土地」の移動を確認できました。

ところが、平成28年3月、洛西口駅が高架全面開業でありながら高架下の駐輪場の課税がないことが発見されました。4年未課税となっており、税務課は調査を約束しました。しかし、その結果について、令和2年度以降課税することとしたとだけ知らされました。その理由は守秘義務を根拠に示されませんでした。この未課税による職員の処分があったとは聞くことがありませんでした。

この件も課税を検証するため調書を取得したところ、別件を発見することとなったのであります。それが本件訴訟の発端であります。令和3年の固定資産評価の概要調書土地のうち、第三表「納税義務者区分」による土地に関する調の頁に、法人1、地積欄に一般田60966平方米、一般畑5486平方米と表示されています。一般法人は「農地転用」手続以外で「農地」取得することは不可能であると考えます。向日市農業委員会に情報公開請求し、入手した情報によれば、この土地は、令和2年2月、京都府の農地転用許可、同年3月、所有権移転登記により日本電産(現=ニデック)が取得したものであることが判明しました。

 農地転用した「非農地」である土地が、固定資産台帳に「田」であり「畑」として登録されることは「不適切」であると考え、私ども2名は監査請求に至りました。

 しかし、結果は先述のとおり棄却となり住民訴訟へ発展したものです。

 令和3年、令和4年で「みなす課税」によって得られる税収は、過少に見積もっても1700万円。住民税収入が減少するなか、まことに得難い財源であります。課税を実行し、予算化し、各種の事業を発展させるべきです。給食サービスの拡充、不登校児童への支援、保育士の雇用拡大、そして災害対策、特に上水道の耐震化は急を要します。需要は尽きません。還元を受けるのは、私たち市民の権利であります。

 ここに私ども2名は向日市民を代表して、この課税が「職権濫用」であることを主張するものであります。

 前2件も含めて特別な法人に忖度した課税は断じて許してはなりません。衡平で公正な分かり易い判決を求めて陳述を終わります。
ありがとうございました。

   水島 雅弘

 原告(杉谷伸夫)意見陳述 全文

1.自己紹介

 原告の杉谷伸夫です。向日市議会議員をしています。なぜ裁判提訴に至ったのか経過と 思いを裁判長に訴えさせていただきたいと思います。

2.提訴に至る経過

  2年前、一人の市民、もう一人の原告である水島雅弘さんから、市議会議員である私 に訴えがありました。

 「日本電産が現在開発中で、一部建設が始まっている広大な土地 が、未だに農地課税のままだ。向日市に事実関係を質して、是正を求めて欲しい」というものでした。詳細は水島氏が陳述された通りです。

 その土地は、造成工事が終わり、その時点ですでに建築工事がどんどん進行している 段階でした。誰が見ても農地ではありません。しかも数ヘクタールの広大な土地です。 市民の訴えの通り、農地として格安の課税がされているのか、もしそうならおそらく数千万円もの税の優遇になります。事実関係と、もしそうなら、その根拠を質さなければならないと思いました。

  私は偶然、議会の中で課税関係を所管する委員会に所属していましたので、その委員会の中で、あるいは議会外で、市役所の担当部局に事実関係を質しました。

 しかし返っ てくる答えは「個別の課税情報については守秘義務があるので、答えられない」という ものです。「課税額を聞いているのでは無い。市民が主張しているように、農地をして 課税しているのか、どうか?」と質しても「農地課税か宅地課税かも答えられない」と の回答です。何度もやりとりしましたが、らちがあきません。 その過程で、間違いなく向日市行政が農地課税を行っていること、それは裁量の範囲 を逸脱しており違法であることの確信を得ました。

 数千万円の不適正な課税の疑いが強 いのに、このまま放置はできません。そこで真実を明らかにし、本来は向日市の歳入と なるべき多額の税収を取り戻すために住民監査請求を行ない、訴訟に至りました。

3.私の訴え

  被告向日市からは、農地課税を続けている理由について2点が示されました。

①使用収益開始通知が出されているだけでなく、公共施設の整備が整わなければみ なす課税できない。

②使用収益開始・未開始の土地が混在する状態でみなす課税をすれば、二重課税が 発生する。

 これらの問題は「みなす課税できない」ことは全くなく、十分可能であるどころか、 年間1千万円単位の税収を向日市は失うことになりますので、やらなければならないこ とです。

 私が議員活動報告ニュースで、この問題を書いたところ、多くの方々から問合せを頂 きました。
 この広大な土地がどんどん開発され、ビルが建設され、現在は事業が開始さ れている様子を、5万6千市民は皆見ています。この土地が、まさか農地として課税さ れているなど誰も思ってもいなかったのです。

 課税は公明正大に行うべきです。もしも企業進出を促進するための政策として税の減 免をおこなうならば、公明正大に減免条例を議会に提案し、市民の皆さんの理解と議会 の承認を受けておこなうべきです。市民の知らないところで秘密裏に、市民に損害を与 えるような優遇措置が行われることがあってはならないと考えます。

4.最後に特に述べたいことがあります。

 それは、この違法な課税を突き止めることがで きたのは、向日市という小さな自治体に、特定の法人一社が巨大開発を行ったというと いう特別な条件が重なったからだということです。例えば同じようなことが京都市で行 われていても、市民が発見することは不可能でしょう。特定の企業や個人に対する税の 違法・不当な優遇が、その他にも行われているのではないか、という懸念があります。 それは向日市に限ったことではありません。もしそのようなことが行われたとしても、 「個別の課税情報については守秘義務がある」ことが壁となって、市民が明らかにする ことは極めて困難です。 ですから今回、様々な条件と偶然が重なったことで明らかになった違法な課税行為に 対しては、「行政の裁量」を広く認めず、厳しく是正させることによって、行政の裁量 で安易に優遇を行うことに対する歯止めを掛けていただきたいと強く要望します。 裁判長の公明正大なご判断をお願いして、私の陳述を終わります。

 杉谷伸夫

 原告(杉谷伸夫)意見陳述 要旨

  2年前、「日本電産が現在開発中で、一部建設が始まっている広大な土地が、未だに農地課税のままだ。向日市に事実関係をただし、是正を求めて欲しい」と市民から訴えがありました。その土地は、すでに誰が見ても農地ではありません。訴えの通りなら数千万円もの税の優遇になります。

 私は議会の内外で、市に事実関係を質しましたが、「守秘義務があるので、答えられない」の一点張りです。
 そこで真実を明らかにし、本来は向日市の歳入となるべき多額の税収を取り戻すために住民監査請求を行ない、訴訟に至りました。

 被告向日市からは、農地課税を続けている理由について2点が示されました。

①使用収益開始通知が出されているだけでなく、公共施設の整備が整わなければみなす課税(注:宅地課税すること)できない。
②使用収益開始・未開始の土地が混在する状態でみなす課税をすれば、二重課税が発生する。

 これらの問題は「みなす課税できない」ことは全くなく、十分可能であるどころか多額の税収を向日市は失うことになりますので、やらなければならないことです。

 私が議員活動ニュースで、この問題を書いたところ、多くの問合せを頂きました。この土地が、まさか農地として課税されているなど、市民の誰も思ってもいなかったのです。
 この違法な課税を突き止めることができたのは、向日市という小さな自治体に、特定の法人一社が巨大開発を行った別な条件が重なったからです。ですから今回、様々な条件と偶然が重なったことで明らかになった違法な課税行為に対しては、「行政の裁量」を広く認めず厳しく是正させることで、行政の裁量で安易に優遇を行うことに歯止めを掛けていただきたいと強く要望します。


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★訴状はここからダウンロードできます!


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